【開催レポート】NPOカフェまんまる「コミュニティを科学する」  

日   時: 2025年6月7日(土) 13:30~16:00
場   所: もんぜんぷら座 3 階 304会議室
対   象: NPO・市民活動団体、居場所運営者、組織運営者、コミュニティに関心のある学生、個人など
参加人数: 20人
内   容: ①事例提供(NPO法人場作りネット 理事 西山卓郎さん)
       ②グループワーク

この日のテーマは「コミュニティを科学する」。 私たちは生活のなかで、家庭や職場、地域、趣味のグループなど、さまざまなコミュニティに関わっています。そのコミュニティが心をあたたかくすることもあれば、どこか居心地の悪さを感じさせることもある…。そんな身近だけれど見過ごしがちな「コミュニティ」について、参加者同士で語り合い、見つめなおす機会となりました。

「問い直す」ことから始まる

交流会の冒頭では、NPO法人場作りネット理事・西山卓郎さんから事例提供がありました。西山さんは「コミュニティを語る前に、まず“コミュニティ”という言葉自体を問い直してみませんか?」と提起。
語源をひも解くと、ラテン語で「共に生きる・協働する」といった意味があるそうで、「ゆるやかな合意のもとに共同で何かを行う場」として捉えるのが一つの視点であると紹介しました。

続けて、西山さんが関わってきた3つの実践事例が紹介されました。

一つ目は、DVや虐待から逃れる人が安く泊まれる施設「やどかりハウス」の事例です。当初は電話相談を中心とした活動でしたが、コロナ禍で「行く場所がない」という声が増加。閉館予定だった劇場を借りて居場所づくりを始めたところ、1年で450人が利用。LINEの「オープンチャット」でつながった人々が自発的に支え合う“ゆるやかなコミュニティ”が生まれました。「制度に当てはめないからこそ生まれる力がある」と西山さんは語ります。

スピーカーの西山さん

二つ目は、「のきした」という取り組み。誰かを助けるために始めたのではなく、「困ったときに一時的に雨風をしのぐ場所」という発想ではじまった活動です。支援/非支援という枠を取り払い、自立共生を意味する“コンヴィヴィアリティ”という考え方を紹介しました。

三つ目は「Library Lab」。民間企業が始めた図書館のような場づくりですが、無料で本を貸すことに対して「本当に無料なの?」「後で何か請求されるのでは?」という不安の声があったそうです。これは、「等価交換がない場」に対する不信感の表れでした。「納得感を持ってそこに関われるかどうか」という問いは、地域づくり全体に通じる重要な視点と言えます。

西山さんは「“コミュニティ=善”という固定観念でなく、“この場所は自分にとってどんな意味を持っているのか?”を問い直すことが、持続可能なつながりの鍵なのではないでしょうか」と問いかけました。

対話を通して考える「わたしにとっての心地よいコミュニティ」

後半は、個人ワークとグループディスカッション。「あなたにとって“コミュニティ”とは何ですか?」という問いをもとに、参加者は自身の所属してきたコミュニティを振り返りました。

「家族はコミュニティなのか?」という問いには賛否両論。「生まれたときから存在する家族は、コミュニティというより“環境”では?」「いや、対話や協働があるなら立派なコミュニティ」と意見が分かれ、議論が白熱しました。

ある参加者は、「自治会や町会は、昔からの“仕組み”として存在してきたけれど、今の若い世代にはなじみが薄くなっている。どうすれば“関わりたくなる場”に変えられるのかを考えたい」と話しました。また別の人は、「自分の“居場所”だと思えるには、安心して失敗できる余白が必要。制度が整っていることよりも、人のぬくもりがあることの方が大事だと感じた」と語っていました。

最後に、グループで交わされたディスカッションの内容を全体で共有。それぞれのグループからは、「PTAに居心地が良くないケースがあるのは、やらされ感があるからではないか?」という問いや、「善いコミュニティばかりではない」という鋭い指摘も飛び出し、会場は静かな熱気に包まれました。

この発表の様子を、グラフィックレコーディングで残してくれたのが、ボランティアとして参加した袖山知香さんです。言葉や感情、気づきの流れが視覚的に表現されていくその様子に、多くの参加者が見入っていました。

グラフィック・レコーディングに挑戦!

最後に、参加者から寄せられた感想の一部をご紹介します。

●人によって“コミュニティ”の定義がこれほど違うとは思わず、新鮮な驚きがあった
●「コミュニティとは何か」を考える中で、それが“自発的な活動”であるということを再認識できた
●コミュニティの定義ははっきりしていると思っていたが、実はグレーゾーンがとても広いことに気づかされた
●今日この場所での出会いや対話そのものが、ひとつのコミュニティだったのかもしれないと感じた
●参加者が感じるコミュニティが、“居場所”のようなものなのか、“何かを成し遂げるためのチーム”なのか、その違いをもっと知りたくなった

まんまるでは、今後も交流会を開催していく予定です。関心のある方は、ぜひ足を運んでみてください。
小さな対話の積み重ねが、私たちの地域を少しずつ優しく、あたたかく変えていくはずです。

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