自立援助ホームを知っていますか?【NPO法人子どもステーションいちにのさん】

義務教育を終えた子どもたちの先はどこでしょうか?

高校を卒業した子どもたちはどうするでしょうか?

それぞれの分岐点にはさまざまな選択がありますが、中には自分の家庭にいられなくなり、働くことを選択せざるを得ない子どもたちもいます。しかし、その多くは精神面や能力面でも自分ひとりで生活することが難しく、困難を抱えたまま周りのサポートを受けることができず孤立するケースもあります。

「自立援助ホーム」は、児童養護施設などを退所し働き始める原則15歳から20歳まで(場合によっては22歳まで)の子どもたちが、共同生活を送りながら、貯蓄を含めたお金の管理や生活面、精神面のサポートを受け、一人で生きていくための準備をする施設です。

現在長野県には、男性専用の夢住の家(むすのいえ)と女性専用のいちにのさんの2つの施設があります。

今回、NPO法人子どもステーションいちにのさんが2016年から運営する自立援助ホーム、いちにのさんの施設長髙橋市子さんから話を聞きました。

髙橋さんは児童養護施設で働いていた頃、施設を出て社会に出ていく子どもたちが一人で生きていく難しさを目にし、施設を出た後もサポートできる環境が必要だと感じ、自立援助ホームを設立。「子どもたちはわたしのことを、口うるさいおばさんだと思っているだろう」と自分で話すほど、礼儀やマナー、ゴミの出し方なども生活している中でしっかり伝えています。その根底には、社会に出てこういったことで辛い思いをしてほしくないという気持ちが強くあります。施設には他にも常勤のスタッフもおり、子どもたちの悩みにじっくり向き合っています。

ボランティアも施設を支える大きな力になっています。現在10人のボランティアが、食事の準備や掃除などを通じて施設を支えています。「自分たちも何かできることがないかと集まってくれている。ボランティアのみなさんそれぞれ個性があり、子どもたちもいろいろな人と触れ合えるいい機会になっていのはないか」と話します。

いつかはここを出て自立して生きていく、限られた時間の中で自分の力で幸せに生きていく力をつけるために、施設ができることは「自分でできることは自分でやる力をつけること」。例えば雨が降っているとき、駅まで車で送って行ってあげるのではなく、早めに家を出て歩いていくのかバスで行くのかその手段を自分で考え自分で行く。スタッフとしてもやってあげたい気持ちは強いけど、こうした積み重ねが子どもたちの力になると信じているそうです。

子どもたちに共通していることは、母親への強い想いだと高橋さんは話します。母親が変わることで子どもたちも変わる。施設で子どもたちが話す親への思いや思い出を、母親に伝えることで、変わるきっかけになるかもしれないとも考えるそうです。しかし今の制度では施設から母親への働きかけは難しく、とても歯がゆい想いを抱いています。「長野県は施設も少なく、現場のこういった声も届きにくい。他県のように施設間の情報交換の場に行政も入る機会や情報や考えを施設や児童相談所、関係機関と共有できる場が増えれば、前進していくのではないか」と話しました。

自立援助ホームの存在やその重要性はまだまだ一般的に知られていないことも現状です。より多くの市民に関心を持ってもらうこともとても大切なことだと感じました。

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